FM936のエントリーでも書いたけど、複数メーカーが同一ジオメトリーのフレームを販売しているケースって、ちょいちょいある。
behind-the-bar.hateblo.jp
【MTB】
NS Bikes Synonym
NS Bikes - Stay True!

Conorbikes WRC
WRC DARK 21 | Conor Sports, S.A.

Stevens(発売されなかった模様?)
[Exclusiva] Nueva doble de XC de Stevens, imágenes de su prototipo

*1
まぁいわゆる「完璧に一致!」てやつだね。
当然、MTB以外にもある。
【シクロクロス】
Donnelly C//C
Cyclocross Bikes – Donnelly Cycling

Bombtrack Tension C
Cyclocross – Bombtrack

Planet X XLS EVO
CX - Cyclocross Bikes | Planet X

*2
【ロードバイク】
Cinelli Pressure
Pressure - Cinelli

Atom6 STRADA
STRADA - Atom 6 cycling

【元ネタ】
https://bikenewsmag.com/2020/12/18/cinelli-pressure-strikingly-resembles-atom6strada/
気づいただけでこれだけ(ロードはネタ元あるけど)。結構あるなぁ。とりあえずこいつらは同一ジオメトリーブラザーズ、略して「同ジオ兄弟」と呼ぶことにしよう。
これ、どういうからくりなんでしょうね。
以下は想像です。
R&D・販売を担当するメーカーと、設計・製造を担当するファクトリーがいる。メーカーは普通、金型の独占使用権を持っている。当然、元を取るためには大量製造/販売が基本になる。まれによくある「メーカーがノルマ押し付けてきてキツイ」の背景だね。
大手はこのやり方がメインなんだと思う。ただ、中小規模のメーカーだと、ファクトリーが要求する製造本数を確保できない。そうするとメーカーは競争力のある価格で販売できないし、ファクトリーは利益の出る本数を製造できない。困った。
そこで、フレーム(金型)の共同利用スキームの出番
メーカーAがR&Dを担当し、ファクトリーは製造を担当する。メーカーAは本来持っている金型の独占使用権を手放し、代わりに価格面のディスカウントを受ける。ファクトリーは他メーカーにもフレームを卸す。購入したメーカーB、Cは塗装を変えて別モデルとして販売する、的な。
エリアフランチャイジー的なものや、2次利用に際してはカスタマイズを要求する、メーカーAしか販売できない優先期間を設ける、などの付帯条件がありそうだけど、基本はこんな感じだろう。
当然、開発メーカーと製造ファクトリーが同じ会社ってこともありえて、そういうのの一部が、いわゆる「中華カーボン」(海外では”Open Mold Frame”)って呼ばれるんだろうと思う。
図示するとこんな?
大手による独占利用
中小による共同利用
業界人じゃないので、全部想像だけどw
メーカーAのメリット
・安く仕入れることでR&Dコストを早期に回収できる
メーカーB,Cのメリット
・既に実績のあるフレームを使うことでR&Dコストを負担しないで済む
メーカーA,B,Cのデメリット
・オリジナリティ(≒ブランディング)が上がりにくい
・商圏のバッティングが発生することがある
ファクトリーのメリット
・製造台数を増やし、売上・利益増
・金型償却までの期間を短くできる
・フィードバックが増え、品質向上が期待できる
顧客のメリット
・個性的なプロダクトを安価に購入できる
デメリットは若干あるが、誰も損しない素晴らし仕組み!上記のシクロクロスのフレームの場合、Donnelly(米)、Bombtrack(独)、Planet X(英)とマーケットの棲み分けが出来てる。日本だとDonnellyとBombtrackが輸入されているのでバッティングしてるけどw
スペシャライズドやGIANTなどの巨大企業は資本と大量生産によるコストダウンで勝負し、中小はこういうフレームの共同利用で勝負するということなのかも。仕入価格やR&Dコストを分散できるなら、大手にはできないチャレンジングな製品開発できるしね。
こういう金型の共同利用、まぁ昔からあるビジネススキームなんじゃないかな。近年、情報伝播が速く、遠くまで届くようになって、以前より可視化が進んだのだと思う。
なお、同ジオ兄弟は、発見しだいこのエントリーに書き足して行く予定。
【閑話1】
中小の戦略、こういうスキームが流行ると、プロダクトで差別化しにくくて、マーケティングが勝負の分かれ目なのかなぁ。塗装、webページの作り込み、PV、ソーシャルメディアの使い方、どんなライダーをサポートするか、みたいな。
【閑話2】
MTBはたぶんNSがR&Dをやってるんだと思うけど、シクロとロードはどこが担当したんだろうかと疑問が。
シクロクロスの方は、ジオメトリーがめちゃくちゃ良さげで妥協してる感が薄い。中国メーカーが適当に作ったやつではなさそう。Donellyはメインはタイヤメーカーだからフレームの開発能力が低そうだし、Planet Xは元から開発したりしない。オフロードバイクで実績があるBombtrackが担ったのかな?と想像。
ロードは…分からんな。Cinelliの過去のデザインからかなり離れてる(カーボンフレームはスローピングが多い)し、Atom6はかなり企業規模が小さそうだし。デザイン的には自分の持ってるICANと雰囲気が似てるんだよなぁ。どこかは分かんないけど、中国のメーカーが設計に深く関わってそうな気がする。